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社外CFOは何をする人か — 顧問税理士・経営コンサルタントとの違い

読了の目安:約12分 / 想定読者:年商1〜3億円・単院の美容クリニックの院長・経営者

目次

この記事について

年商1〜3億円のクリニックには、経営管理を専任で担う人がいません。院長は診療に入り、顧問税理士は税務を見て、スタッフは現場を回す。それぞれが自分の持ち場を全うしています。ところが、その持ち場のどれにも属さない仕事——毎月の数字を締めて読み解き、価格や投資の判断材料を整え、決めたことが実行されるまで追いかける——が、宙に浮いたまま誰の手にも渡らずに残ります。この空白を埋める役割につけられた名前が「社外CFO」です。

この記事は、社外CFOが何をする人なのかを定義することだけを目的にしています。売り込みではなく、役割の輪郭を淡々と描きます。顧問税理士や経営コンサルタントと何が違うのか、逆に何をやらないのか——そこまで含めて線を引くことが、この役割をいちばん正確に伝える方法だと考えるからです。

なぜこの規模に「経営管理の空白」が生まれるか

大企業には、CFO(最高財務責任者)がいて、その下に経理部・財務部があります。数字を締め、資金を管理し、投資を評価し、経営会議に材料を出す——この一連の仕事は、専任の部署がフルタイムで担っています。

一方、開業して間もない小さなクリニックには、そもそも経営管理という仕事がほとんど発生しません。メニューは少なく、スタッフも数名、広告も限られ、院長がすべてを頭の中で把握できます。数字は自然と手のひらに乗っています。

問題は、その中間です。年商1〜3億円・スタッフ5〜15名・広告費が月に数百万円・機器投資の判断がたびたび発生し、コース契約の前受金も動く——このくらいの規模になると、経営管理が明らかに必要になる複雑さに達します。にもかかわらず、その管理を専任で雇うにはまだ小さい。ここに構造のはざまが生まれます。

フルタイムのCFO人材を一人雇うことを考えてみます。財務・管理会計の実務ができる人材の人件費は決して安くありませんが、その人がこなすべき業務量は、この規模ではフルタイムを埋めるほどありません。月次の締めや会議の準備、投資評価といった仕事は重要ですが、毎日8時間発生し続けるわけではないのです。人件費と業務量が見合わない——だから、この規模でフルタイムのCFOを抱えるのは現実的ではありません。

必要なのは「毎日いる財務責任者」ではなく、「月に数回、外から関与して、経営管理の機能だけを担ってくれる存在」です。この形が、社外CFOです。名前に「社外」とつくのは、常勤ではなく外部から関与する形態だからです。

社外CFOの3つの機能

では、社外CFOは具体的に何をするのか。その中身は、3つの機能に整理できます。

① 計器の設置と月次の運転

一つ目は、経営の「計器」を作り、それを毎月動かし続けることです。

自動車に速度計や燃料計がなければ、運転手は自分がどれだけの速さで、あとどれくらい走れるのかを把握できません。経営も同じで、計器がなければ院長は自院の状態を勘で判断するしかなくなります。ここでいう計器とは、税理士の試算表を待たずに翌月上旬に締める速報の月次損益、10個ほどに絞った経営指標(KPI)の一覧、前受金や納税・賞与を織り込んだ資金繰り予測、そしてメニューごとの「時間当たりでどれだけ利益に貢献しているか」を一枚に並べた貢献利益表——こうした一式を指します。

社外CFOは、これらの計器を設計し、初回を作り込み、そのうえで毎月の集計と更新を巻き取ります。院長がレジや予約や通帳のデータと格闘して資料をそろえるのではなく、院長の時間を使わずに「見える状態」が毎月維持される——ここが一つ目の機能です。

② 外部の目と締切

二つ目は、月次の経営会議を設計し、進行し、宿題を管理することです。

一般の会社には株主がいて、経営者に「先月決めたことはどうなりましたか」と定期的に問います。上司のいる管理職なら、上司がその役を果たします。ところが、株主も上司もいないオーナー経営の院長には、自分に締切と規律を課してくれる他者が構造的に存在しません。自分で自分に「来月までにやる」と約束し、自分でそれを点検するのは、意志の強さの問題ではなく、仕組みとして続きにくいものです。

社外CFOは、毎月決まった日に経営会議の場を設け、数字をレビューし、2〜3の論点に絞って院長に決めてもらい、決まったことを「誰が・いつまでに」の宿題に落とし、翌月にその進み具合を確認します。「先月決めたことはどうなりましたか」と毎月問う他者を、院内に持ち込む——これが二つ目の機能です。

③ 財務・経営管理の専門知

三つ目は、財務と経営管理の専門的な判断材料を提供することです。

たとえば、ある施術を値上げしたら客数はどれだけ減りそうか、その差し引きで利益はどう動くかを試算する。数百万円の機器を買うべきか、何年で回収できてどのくらい稼働すれば見合うのかを評価する。広告費に「獲得単価は生涯価値の何分の一まで」という上限の規律を設ける。賞与や納税や大きな支払いといった資金イベントを、資金が詰まる前に先回りして警告する——こうした仕事です。

これらは、管理会計やファイナンスの技術に属します。医学教育や臨床経験には含まれず、後述するとおり税理士の職掌でもありません。医師でもなく税理士でもない、この専門知の空白を埋めるのが三つ目の機能です。

なお、この3つの機能それぞれの「中身」は、本シリーズの各記事で具体的に開示しています。①なら貢献利益表や速報月次の作り方、②なら月次経営会議の設計、③なら値上げの感応度試算や機器投資の評価——といった具合に、機能の実体を手順まで見られるようにしてあります。社外CFOが何をする人かは、それらを読めば手触りとして分かる仕立てです。

顧問税理士との違い

ここで、多くの院長が抱く疑問に答えます。「それは顧問税理士がやってくれることと、どう違うのか」。

結論から言えば、優劣の問題ではなく、職掌の違いです。

顧問税理士は、過去の確定した数字を、税務のルールに従って正確に処理する専門家です。日々の記帳を整え、決算を組み、税務申告を行い、合法的な節税を助言する。これらは国家資格に裏づけられた専門業務であり、税務申告は税理士だけが行える独占業務です。数字の正確さと、税法という複雑なルールへの精通が、税理士の価値の核心にあります。

これに対して社外CFOは、未来の数字で意思決定を支える役割です。来期の予算をどう組むか、この価格でいくか、この機器に投資すべきか、数か月先に資金は足りるか——まだ確定していない、これから作る数字を扱います。

両者は対立しません。むしろ併存し、協働します。税理士が作る正確な過去の数字は、社外CFOにとって欠かせない材料です。正確な決算がなければ、未来の予測も投資の判断も砂上の楼閣になります。過去を正確に締める税理士と、その上に立って未来を描く社外CFO——役割が分かれているだけで、どちらが上ということはありません。

税理士の試算表は正確ですが、多くの場合2か月ほど遅れて届きます。それは税理士の怠慢ではなく、正確を期す仕事の性質です。社外CFOが速報の月次を作るのは、その正確な数字を待つ間、経営判断を止めないための「速さ優先の別物」であり、税理士の仕事を代替するものではありません。

経営コンサルタントとの違い

もう一つよくある疑問が、「経営コンサルタントに頼むのと、何が違うのか」です。これも、良し悪しではなく形態の違いとして説明できます。

経営コンサルタントの典型的な仕事は、診断と提言です。現状を分析し、課題を特定し、あるべき方向を示す。多くの場合、その成果は報告書という形で納品され、プロジェクトが終われば関与も終わります。外から専門的な視点を持ち込み、質の高い「答え」を提示することに、その価値があります。

社外CFOは、月次の実務を継続的に回す常設の機能です。月末に数字を締め、経営会議を開き、宿題を管理する——この地味な繰り返しを、毎月続けます。一度きりの診断ではなく、経営のカレンダーに組み込まれた定常業務です。

分かりやすく言えば、「答えを置いていく人」と「計器と規律を院内に残す人」の違いです。優れた診断も価値がありますが、報告書だけでは数字は毎月締まりませんし、会議は開かれません。社外CFOは、良い答えを一度示すことよりも、決めて実行する仕組みを院内に残し、それを回し続けることに軸足を置いています。

(もちろん、継続的に伴走するタイプのコンサルティングもあり、その場合は社外CFOと重なる部分が出てきます。ここで対比しているのは、あくまで「診断・提言型」という典型例です。)

やらないこと・できないこと

役割を正確に伝えるには、やることと同じくらい、やらないことを明示する必要があります。社外CFOには、はっきりと踏み込まない領域が4つあります。

第一に、診療・施術・医療判断には一切関与しません。どんな治療をするか、どの施術が適切か、合併症にどう対応するか——これらは医師の領分であり、社外CFOが口を挟む領域ではありません。

第二に、スタッフを直接指揮しません。現場のスタッフに指示を出し、動かすのは、あくまで院長と現場のラインです。社外CFOは仕組みや基準の設計を支援しますが、実行の指揮命令には入りません。

第三に、法律・税務の専門的な判断はしません。税務申告は税理士、法律判断は弁護士の独占業務です。社外CFOは、労務にこんなリスクがありそうだ、この契約書はここが論点になりそうだ、と問題の在りかを見つけて整理し、しかるべき専門家(弁護士・社会保険労務士・税理士)につなぐ係であって、自ら法的・税務的な結論を出す立場にはありません。この線引きを守ることは、誠実さであると同時に、法令上の当然の前提でもあります。

第四に——これがもっとも大切なのですが——経営の意思決定をしません。価格をいくらにするか、その機器を買うか、この人を採用するか。決めるのは、常に院長です。社外CFOは、決めるための材料(数字・選択肢・試算)を整え、決めやすい状態を作り、決まったことを追いかけます。しかし、決定そのものの主語は最後まで院長であり、その責任を肩代わりすることはありません。

役割分担の全体像

以上を、院長・現場・社外CFOの3者でどう分担するかとして整理すると、次のようになります。大づかみに言えば、院長が「決める」、現場が「実行する」、社外CFOが「数字と規律を担う」という分かれ方です。

領域 院長(決める) 現場(実行する) 社外CFO(数字と規律)
経営の可視化 見る指標を承認する 日々のデータを入力する 計器を設計・作成・更新する
実行の規律 決定し、率先する 宿題を実行する 会議を設計・進行し、進捗を管理する
売上向上 価格・打ち手を決める 接客・施術・運用を担う 計測・試算・規律を担う
コスト・投資 投資の可否を最終判断する 使用実態を情報提供する 評価・交渉材料・資金繰りを担う
オペレーション 業務移管を決断する 現場の改善を担う 時間の分析・費用対効果を出す
組織・人材 処遇を決める リーダーが現場を運用する 試算・制度の選択肢・相場観を出す
リスク・法務 対応を決める 現場の運用を徹底する 論点を見つけ、専門家につなぐ

どの行を見ても、「決める」の列には必ず院長がいます。社外CFOは、その決定が良い材料の上でなされ、決まった後にきちんと実行されるよう、右の列を引き受ける存在です。

関与の形と「出口」

社外CFOの関与は、ずっと同じ濃さで続くものではありません。

立ち上げの時期——最初の3〜6か月ほど——は、関与が濃くなります。計器をゼロから設計し、会議体を立ち上げ、過去の数字を整え、判断の基準を作る。この構築期には、それなりの手数がかかります。

その山を越えると、関与は月次の定例会議と、必要に応じたテーマ別の相談へと落ち着いていきます。仕組みがいったん回り始めれば、毎月の運転は軽くなるからです。

そして、健全な設計であれば、そこからさらに関与は薄くなっていきます。院内に事務長のような右腕が育ち、月次パックの作成や進捗管理といった実務を担えるようになれば、社外CFOはその仕事を段階的に院内へ移していきます。最終的に、経営管理の機能が院内に根づくのが理想です。

言い換えれば、社外CFOはずっと依存させることを目的にする役割ではありません。むしろ、自分の関与を減らしていける状態を作ることが、役割を全うしたということになります。これは建前ではなく、役割の定義そのものに含まれる性質です。

向く院・向かない院

最後に、正直なところを書きます。社外CFOという役割は、すべての院に必要なものではありません。

向いているのは、たとえば次のような院です。年商が1億円を超えて、数字が院長の頭の中に収まりきらなくなってきた。スタッフが10名前後になり、院長がすべてを直接見る属人的な経営に限界を感じ始めた。機器や採用や新メニューといった投資の判断が増え、その一つひとつの重みが大きくなってきた——こうした段階の院では、経営管理の空白がはっきりと痛みになって現れます。

逆に、向かない場合もあります。開業して間もなく、メニューも規模もシンプルで、院長がすべての数字を頭で把握できているなら、社外CFOは過剰です。計器を外から入れるより、院長自身が全体を見渡せる今の状態を保つほうが理にかなっています。

もう一つ、規模にかかわらず向かないのは、そもそも現状の数字を見る気がない場合です。どれだけ精緻な計器を設置しても、それを見て判断する人がいなければ意味を持ちません。計器は、見る人がいて初めて価値になります。数字を経営の道具として使う意思——そこだけは、外から補うことができません。

締めに

社外CFOとは、年商1〜3億円という「経営管理が必要なのに専任を雇えない」規模のはざまで、宙に浮いた経営管理の機能を、月数回・外部から担う役割です。計器を作って回し、外部の目と締切を持ち込み、財務・経営管理の専門知で判断材料を整える。過去の数字を扱う税理士とも、答えを置いていくコンサルタントとも職掌が違い、診療にも指揮命令にも法的判断にも、そして意思決定そのものにも踏み込まない。決めるのは常に院長で、社外CFOはその決定が良い材料の上でなされ、実行されるまでを支える——これが、役割の定義です。

自院にこの役割が当てはまるかどうかは、抽象的に考えるより、実際に手を動かしてみるのがいちばん分かりやすいはずです。本シリーズの各記事には、貢献利益表や資金繰り表、投資評価のワークシートといった、社外CFOが実際に使う道具が開示されています。そのうちの1つを自院で試してみると、「これを毎月自分で回し続けられるか」という問いへの答えが、おのずと見えてきます。その答えこそが、この役割が自院に要るかどうかの、いちばん確かな判断材料になります。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業。
M&Aにより取得した赤字企業の再建・価値向上プロジェクトに複数社参画し、経営改善の実務と事業再生のプロセスに携わる。その後、スタートアップにて経営企画・資金調達・新規事業の立ち上げなど、経営の中枢領域を担当。現在は、自らIT企業を経営する傍ら、企業の再成長や経営課題の解決を支援している。
スタートアップ立ち上げから従業員1,000人規模の企業の再生まで、幅広い事業フェーズでの経験を通じて得た普遍的な経営手法をもとに、各企業の現実に即しつつ、理論に基づいた実践的かつ再現性の高い経営コンサルティングを提供している。

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